ネットに書き込まれたエアアジアの口コミや評判は、どの程度信頼できるものなのか。「二度と乗りたくない」という人もいれば、「安くて満足」という書き込みもある。この記事では実体験を元にエアアジアの評判を検証してみた。
更に、初めてエアアジアを使う人のために、LCC利用の心構えもまとめた。LCCは利用する側にも知識と覚悟が必要なのだ。
目次
遅くて 寒くて 狭くて 自由に
食事ができないエアアジア?
どんなことも人それぞれの感じ方次第だが、客観的な数値が示せるものはできるだけ示して、エアアジアの評判をチェックしてみよう。
これに関しては、定時到着率という指標があるので見てみよう。定時到着率とは、遅れが15分未満で到着した便の割合だ。
本来なら直近の数字をチェックすべきだが、現在、新型コロナウィルスの影響による運休が多く、普段の定時到着率がわかりいくい。
そこで、ここでは新型コロナウイルスの影響が出る前のデータを参考にしてみよう。
新型コロナウイルスの影響による運休については、記事「エアアジアの路線」のエアアジアの運航状況一覧をチェック。
2020年1月のデータを見ると、JALの定時到着率は87.8%(欠航率は1.0%)、ANAは87.9%(欠航率は0.6%)となっている。
エアアジアは、グループ会社ごとに定時到着率が大きく異なる。
注:スマートフォンでは表を左にスクロールして下さい
航空会社 | コード | 主な路線 | 定時 到着率 | 欠航率 |
エアアジアX | D7 | 札幌-クアラルンプール 羽田-クアラルンプール 成田-クアラルンプール 関空-クアラルンプール 福岡-クアラルンプール 関空-ホノルル 関空-台北 | 76.0% | 0.0% |
タイ エアアジアX | XJ | 札幌-バンコク 成田-バンコク 名古屋-バンコク 関空-バンコク 福岡-バンコク | 66.1% | 0.0% |
フィリピン エアアジア | Z2 | 関空-マニラ | 57.4% | 0.1% |
タイ エアアジア | FD | タイ国内 タイ-アジア14カ国 | 85.6% | 0.0% |
エアアジア | AK | マレーシア国内 マレーシア-アジア17カ国 | 85.2% | 0.0% |
インドネシア エアアジア | QZ | インドネシア国内 インドネシア-アジア3カ国、 オーストラリア | 77.3% | 0.1% |
エアアジア インディア | I5 | インド国内 | 71.3% | 0.2% |
参考資料:OAG Aviation Worldwide Limited「January 2020 Airline On-time Performance Reports」
注:上の表は会社全体の定時到着率、欠航率の平均であって、特定の路線の定時到着率、欠航率ではない。
上の表では定時到着率が 66.1% で、低い数字のタイエアアジアXだが、85%近い月もあり、波があるようだ。
人気のある関空-ハワイ路線の遅延はどうだろうか。この路線はエアアジアXが運航している。エアアジアXの2020年1月の定時就航率は76.0%で、他の月も70~80%の間で推移している。
エアアジアXは日本からの路線が最も多いので、評判が気になる人は多いと思うが、今までエアアジア、エアアジアX、タイエアアジア、タイエアアジアXに搭乗した経験から言うと、サービスや対応については、特に会社ごとの違いはなかった。
次に、上の表の右端に記載した欠航率を見てほしい。エアアジアグループのほとんどの航空会社で、欠航率が0.0%になっている。最も欠航が多いエアアジアインディアでも、欠航率は0.2%しかない。
LCCは欠航が多いというイメージだが、統計を見る限り、エアアジアの欠航率は高くはない。もちろん時期よって違いがあるので、予約した便が運悪く欠航になってしまうことはあり得る。
実際ネットには、エアアジアが突然欠航になり困った、という記事がたくさんあるが、JALやANAでも欠航率が1%を超えることもあるので、欠航はLCCに限ったことではない。
欠航の理由は1.天候、2.機材故障、3.機材繰り(使用する航空機が到着しない)、4.利用客が少なく採算が合わない、など。
1.~3.の場合は、当日にわかることが多いが、4.の場合は2カ月くらい前に連絡がくることもある。
これは、ネットでよく目にするエアアジアの評判のひとつだ。実際、私が搭乗した時も、エアアジアの機内はいつも寒かった。ブランケットを買わせようとして、わざと機内の温度を下げているのでは、という疑惑を持っている人もいるようだ。
エアアジアに限らず機内が寒いというのはよくあることなので、上着など、準備をして乗ったほうがいい。
エアアジアでは、ブランケットを1枚借りるのも有料で、300円も支払わなければならない(金額はレートにより変動)。ブランケットの予約はできず先着順の貸し出しなので、品切れの場合もある。そして到着の1時間前には返却しなければならない。
機内では、ブランケット、ネックピロー、アイマスクがセットになったコンフォートキットも1300円程度で販売されている。エアアジアのロゴ入りなので、わざわざ購入する人もいる。
コンフォートキットは、事前にエアアジアの予約管理画面で購入することもでき、この場合は1,125円。
座席は確かに狭い。国際線エコノミークラスの座席をJALと比べてみればその差は歴然としている。
航空会社 | エアアジア | JAL |
シートピッチ | 70cm | 84~86cm |
シート幅 | 40~43cm | 45~48cm |
体格のいい人にとっては、このサイズだと、長時間のフライトはけっこう辛いだろう。チケット代の安さと引き換えに我慢するしかない。
もう一点、注意したいのが、シートだけでなく通路も狭いということだ。通路側に席をとって座っていると、乗務員や他の乗客がよくぶつかってくる。
満席状態の時、トイレの近くの席に座っていると、かなりの数の人が自分の横を行き来することになり、少しでも手足が通路にはみ出していると、誰かにぶつかられて安眠を妨げられる。
1人旅の場合、出入りのしやすい通路側の席を希望する人が多いが、安眠したいなら窓側か中央の席がいいと思う。

エアアジアのサイトには「外部から食べ物および飲み物を機内に持ち込むことはお断りしております」と書かれている。
しかし実際には、水や簡単な食事(サンドイッチなど)は、何度も機内で食べたことがある。乗務員に注意されることもなかった。匂いがきついとか、生ものでなければ、ある程度は黙認しているのだと思う。
でもエアアジアの機内食はけっこうおいしいので、事前に注文しておくのもいい。エスニックが好きな人ならメニュー選びも楽しいと思う。料金も600円程度で、それほど高くない。
LCCを利用するには
知識と覚悟が必要
エアアジアはLCC(Low Cost Carrier)、つまり低コストで効率的な運営を目指している航空会社だ。このLCCに一般的な航空会社(レガシーキャリア)と同じサービスを求めるのは、そもそも間違っている。
LCCの特徴を理解して利用すれば、「えっ、そんな対応するの」と驚いて落胆することも少なくなると思う。
エアアジアが普通の航空会社と違うのは以下の点だ。
1.機内での無料サービスは基本的にない
2.無料の手荷物は7kg以内
3.座席は勝手に割り振られる
4.空港での駐機時間が短い
5.利用するゲートは空港の端
6.キャンセルは不可
7.予約はネットで行う
8.遅延・欠航しても補償はない
こういった点を理解しないで予約すると、後で後悔してしまう。

チェックリストを作って管理しよう
エアアジアでは、機内の飲食物はもちろん、ブランケットなども全部有料だ。無料で新聞を配ってくれるなんていうこともない。
しかもお金を払ったからと言って、すぐに欲しいものが提供される保証もない。時にはブランケットを買うのに何十分も待たされるし、食事も予約なしでその場で買おうとすると、売り切れということもある。
極端に言ってしまえば、機内では何のサービスも受けられない、と覚悟して乗るのが得策だ。
エアアジアでは、機内持ち込み手荷物7kg以外は、すべて有料だ。レガシーキャリアなら一人20kgくらいまで無料で運んでくれる。チケット代とは別に荷物の料金がかかることを頭に入れておこう。
日本発着便の荷物については、エアアジア・荷物の料金:機内持ち込みと預け入れ荷物のすべてという記事にまとめたので、参考にしてほしい。

予約の時にお金を払って座席指定をしないと、自動的に席が割り振られる。グループだから、家族旅行だからと言って、並びの席を割り振ってくれたりはしない。
エアアジアの座席指定料金についてはエアアジアの手数料を刻略して安く賢く海外旅行が参考になる。

駐機時間が短いということは、ギリギリのスケジュールで飛んでいるということなので、当然、遅延も多くなりやすい。
乗客にもタイトなスケジュールが要求され、手続きカウンターへは普通より早めに到着しなければならないし、搭乗ゲートへの集合時間も普通より早めに設定されている。乗客を早めに集合させておいて、そろったら即出発というやり方だ。
ターミナルの中央部分の利便性の良い場所はレガシーキャリアが使っているので、LCCは遠いゲートを使用することになる。チェックインカウンターの場所も、奥まっていいたりスペースが小さかったりして、わかりいくいことが多い。
4と5を考慮して、空港には最低でも出発の3時間前までに着くようにした方がいい。

出国審査を終えるようにしよう
エアアジアのサイトには「エアアジアでは全ての運賃タイプにおいて払い戻しを承っておりません」と書かれている。キャンセルしてもチケット代は戻らない。
戻ってくるのは空港利用税だけだ。チケット代が戻らないだけでなく、キャンセル料と払い戻し手数料も取られる。たとえば成田-バンコク(往復)のチケットをキャンセルした場合について計算してみた。
- キャンセル料 12,000円
- 払い戻し手数料 1,000円
- 空港利用税 4,970円
12,000+1,000-4,970=8,030円
つまり、キャンセルすると追加で8,030円も支払わなくてはいけない。エアアジアの公式ホームページに書かれているとおりだとすると、上のような計算になる。
しかし、実際はキャンセル料を払ったという話は聞いたことがない。エアアジアをキャンセルする時は、当日、搭乗しなければ大丈夫だ。連絡の必要もない。後からキャンセル料の請求がくることもない。
とはいえ、キャンセルの可能性が少しでもある人は、料金が高くてもキャンセル可能な他の航空会社の利用も検討してみよう。
エアアジアの予約は、ネットで行うのが基本だ。しかし、エアアジアのサイトはとてもわかりにくく、支払い関係の情報は特にわかりにくい。
サイトの更新なんかに時間とお金はかけていられない。その分、チケット代を安くする!ということなのかもしれないが…。
エアアジアの支払い手数料についてもエアアジアの手数料を攻略して安く賢く海外旅行で詳しく説明している。
エアアジアでは、大幅な遅延や欠航の場合、代替機への振替、チケット代金の払い戻しはしてくれるが、その他の補償は基本的にない。
海外旅行保険に入る予定の人は、航空機遅延費用をオプションで付けておくといいだろう。6時間以上の出発遅延や欠航、乗継に間に合わず6時間以内に代わりのフライトを利用できないなどの場合に、宿泊費、食事代、通信費などの保険料が支払われる。
なんだかエアアジアのデメリットばかり並べ立ててしまったが、ネット上の評判に惑わされず、エアアジアとは、LCCとはどんなものなのかを理解して、心構えを持ってほしいという理由からだ。
注意事項の見落としや勘違いで、今まで何回か、エアアジアには悔しい思いをさせられている。「だまされた!」と叫んでしまったこともある。でも、これからも私はエアアジアを使い続けるだろう。なぜなら、やはり安さは魅力だから。
旅行費用を安く抑えたい人にとって必要なのは、エアアジア+agoda(アゴダ)の組み合わせだ。下の記事では、ホテル予約サイトの中でも群を抜く安さのアゴダの使い方と、アゴダのクーポンの入手方法を紹介している。
