ネットに書き込まれたエアアジアの口コミや評判は、どの程度信頼できるものなのか。「最悪。二度と乗りたくない」という人もいれば、「安くて満足」という書き込みもある。
この記事ではエアアジアグループ5社のフライトを利用した実体験とデータを元に、エアアジアの評判を検証してみた。
更に、初めてLCCを使う人のために、LCC利用の注意点をまとめた。「LCCはやめた方がいい」という書き込みを見て心配になっている人は、これを読んで判断してほしい。
目次
遅い寒い狭い食事ができない?
どんなことも人それぞれの感じ方次第だが、客観的な数値が示せるものはできるだけ示して、エアアジアの評判をチェックしてみよう。
これに関しては、定時到着率という指標がある。定時到着率とは、遅れが15分未満で到着した便の割合だ。
調べたのは2023年3月の定時到着率と欠航率だ。欠航率とは文字どおり便が欠航となった割合だ。
エアアジアと比較するためにJALとANAのデータも調べてみた。2023年3月のJALの定時到着率は85.8%(欠航率は0.4%)、ANAは86.8%(欠航率は0.7%)となっている。
注:スマートフォンでは表を左にスクロールして下さい
航空会社 | コード | 主な路線 | 定時 到着率 |
欠航率 |
エアアジアX | D7 | 札幌-クアラルンプール 羽田-クアラルンプール 関空-クアラルンプール |
92.6% | 0.0% |
タイ エアアジアX |
XJ | 札幌-バンコク 成田-バンコク 関空-バンコク |
89.5% | 0.0% |
フィリピン エアアジア |
Z2 | 成田-マニラ 関空-マニラ |
57.3% | 0.0% |
タイ エアアジア |
FD | 福岡-バンコク | 92.3% | 0.0% |
エアアジア | AK | マレーシア国内38路線 アジア17カ国63路線 |
77.4% | 0.2% |
インドネシア エアアジア |
QZ | インドネシア国内12路線 アジア3カ国20路線 オーストラリア1路線 |
78.4% | 0.1% |
エアアジア インディア |
I5 | インド国内74路線 | 70.7% | 0.1% |
参考資料:OAG Aviation Worldwide Limited「March 2023 Airline On-time Performance Reports」
注:上の表は会社全体の定時到着率、欠航率の平均であって、特定の路線の定時到着率、欠航率ではない。
タイエアアジアは、2022年1年間の定時到着率・欠航率。フィリピンエアアジアは2022年9月の定時到着率・欠航率。
エアアジアは、グループ会社ごとに定時到着率が大きく異なる。上の表ではクアラルンプール路線を運航するエアアジアXの定時到着率が92.6%で最も高く、ANAやJALを上回る優秀さだ。
バンコク路線を運航するタイエアアジアXも89.5%という定時到着率の高さだ。
福岡-バンコク路線を運航するタイエアアジアは、定時到着率が安定して高く、2022年は年間で1位にランクされている。
定時到着率とサービスには関係があるかというと、それはまったくない。今までエアアジア、エアアジアX、タイエアアジア、タイエアアジアX、インドネシアエアアジアに搭乗した経験から言うと、サービスや対応については、特に会社ごとの違いはなかった。
次に、上の表の右端に記載した欠航率を見てほしい。エアアジアグループのほとんどで、欠航率が0.0%になっている。最も欠航が多いエアアジアでも、欠航率は0.2%しかない。
JALの欠航率0.4%、ANAの欠航率0.7%と比べると、エアアジアのすごさがわかる。
LCCは欠航が多いというイメージだが、統計を見る限り、エアアジアの欠航率は高くはない。もちろん時期によって違いがあるので、予約した便が運悪く欠航になってしまうことはあり得る。
欠航の理由は1.天候、2.機材故障、3.機材繰り(使用する航空機が到着しない)などで、当日になって欠航がわかることが多い。
この他、利用客が少なく採算が合わないという理由による欠航もあるが、この場合は前もってわかっているので、欠航率の統計には含まれていない。エアアジアも採算が合わないために欠航することがあるが、これについては、記事の最後で詳細に書いた。
これは、ネットでよく目にするエアアジアの評判のひとつだ。実際、私が搭乗した時も、エアアジアの機内はいつも寒かった。ブランケットを買わせようとして、わざと機内の温度を下げているのでは、という疑惑を持っている人もいるようだ。
エアアジアに限らず機内が寒いというのはよくあることなので、上着など、準備をして乗ったほうがいい。
エアアジアでは、ブランケットを1枚借りるのも有料で、300円も支払わなければならない(金額はレートにより変動)。ブランケットの予約はできず先着順の貸し出しなので、品切れの場合もある。そして到着の1時間前には返却しなければならない。
機内では、ブランケット、ネックピロー、アイマスクがセットになったコンフォートキットも1500円程度で販売されている。エアアジアのロゴ入りなので、わざわざ購入する人もいる。
座席は確かに狭い。国際線エコノミークラスの座席をJALと比べてみればその差は歴然としている。
航空会社 | シートピッチ | シート幅 |
エアアジア | 70cm | 40~43cm |
JAL | 84~86cm | 45~48cm |
体格のいい人にとっては、このサイズだと、長時間のフライトはけっこう辛いだろう。チケット代の安さと引き換えに我慢するしかない。
もう一点、注意したいのが、シートだけでなく通路も狭いということだ。通路側に席をとって座っていると、乗務員や他の乗客がよくぶつかってくる。
満席状態の時、トイレの近くの席に座っていると、かなりの数の人が自分の横を行き来することになり、少しでも手足が通路にはみ出していると、誰かにぶつかられて安眠を妨げられる。
1人旅の場合、出入りのしやすい通路側の席を希望する人が多いが、安眠したいなら窓側の席がいいと思う。
エアアジアのサイトには「外部から食べ物および飲み物を機内に持ち込むことはお断りしております」と書かれている。
しかし実際には、水や簡単な食事(サンドイッチなど)は、何度も機内で食べたことがある。乗務員に注意されることもなかった。匂いがきついとか、生ものでなければ、ある程度は黙認しているのだと思う。
でもエアアジアの機内食はけっこうおいしいので、事前に注文しておくのもいい。エスニックが好きな人ならメニュー選びも楽しいと思う。料金も600円程度で、それほど高くない。
LCCを利用するということは
エアアジアはLCC(Low Cost Carrier)、つまり低コストで効率的な運営を目指している航空会社だ。このLCCに一般的な航空会社(レガシーキャリア)と同じサービスを求めるのは、そもそも間違っている。
LCCの特徴を理解して利用すれば、「えっ、そんな対応するの」と驚いて落胆することも少なくなると思う。
エアアジアが普通の航空会社と違うのは以下の点だ。
1.機内での無料サービスは基本的にない
2.無料の手荷物は7kg以内
3.座席は勝手に割り振られる
4.空港での駐機時間が短い
5.利用するゲートは空港の端
6.キャンセルは不可
7.予約はネットで行う
8.遅延・欠航しても補償はない
こういった点を理解しないで予約すると、後で後悔してしまう。
1.機内での無料サービスは基本的にない
エアアジアでは、機内の飲食物はもちろん、ブランケットなども全部有料だ。無料で新聞を配ってくれるなんていうこともない。
しかもお金を払ったからと言って、すぐに欲しいものが提供される保証もない。時にはブランケットを買うのに何十分も待たされるし、食事も予約なしでその場で買おうとすると、売り切れということもある。
極端に言ってしまえば、機内では何のサービスも受けられない、と覚悟して乗るのが得策だ。
2.無料の手荷物は7kg以内
エアアジアでは、機内持ち込み手荷物7kg以外は、すべて有料だ。レガシーキャリアなら一人20kgくらいまで無料で運んでくれる。チケット代とは別に荷物の料金がかかることを頭に入れておこう。
日本発着便の荷物については、エアアジア・荷物の料金:機内持ち込みと預け入れ荷物のすべてという記事にまとめたので、参考にしてほしい。
エアアジア・荷物の料金:機内持ち込みと預け入れ荷物(受託手荷物)3.座席は勝手に割り振られる
予約の時にお金を払って座席指定をしないと、自動的に席が割り振られる。グループだから、家族旅行だからと言って、並びの席を割り振ってくれたりはしない。
エアアジアの座席指定料金についてはエアアジアの手数料を刻略して安く賢く海外旅行が参考になる。
エアアジアの手数料を攻略して安く賢く海外旅行4.空港での駐機時間が短い
航空会社は空港に駐機料というものを払っている。時間に応じて料金が上がるので、LCCはなるべく駐機時間を短くしようとするのだ。
そのため乗客にもタイトなスケジュールが要求される。手続きカウンターへは普通より早めに到着しなければならないし、搭乗ゲートへの集合時間も普通より早めに設定されている。乗客を早めに集合させておいて、そろったら即出発というやり方だ。
5.利用するゲートは空港の端
ターミナルの中央部分の利便性の良い場所はレガシーキャリアが使っているので、LCCは遠いゲートを使用することになる。チェックインカウンターの場所も、奥まっていたりスペースが小さかったりして、わかりにくいことが多い。
4と5を考慮して、空港には最低でも出発の3時間前までに着くようにした方がいい。
6.キャンセルは不可
エアアジアのサイトには「エアアジアでは全ての運賃タイプにおいて払い戻しを承っておりません」と書かれている。キャンセルしてもチケット代は戻らない。
戻ってくるのは空港利用税だけだ。チケット代が戻らないだけでなく、キャンセル料と払い戻し手数料も取られる。たとえば成田-バンコク(往復)のチケットをキャンセルした場合について計算してみた。
- キャンセル料 12,000円
- 払い戻し手数料 1,000円
- 空港利用税 4,970円
12,000+1,000-4,970=8,030円
つまり、キャンセルすると追加で8,030円も支払わなくてはいけない。エアアジアの公式ホームページに書かれているとおりだとすると、上のような計算になる。
しかし、実際はキャンセル料を払ったという話は聞いたことがない。エアアジアをキャンセルする時は、当日、搭乗しなければ大丈夫だ。連絡の必要もない。後からキャンセル料の請求がくることもない。
とはいえ、キャンセルの可能性が少しでもある人は、料金が高くてもキャンセル可能な他の航空会社の利用を検討してみた方がいい。
7.予約はネットで行う
エアアジアの予約は、ネットで行うのが基本だ。しかし、エアアジアのサイトはとてもわかりにくく、支払い関係の情報は特にわかりにくい。
サイトの更新なんかに時間とお金はかけていられない。その分、チケット代を安くする!ということなのかもしれないが…。
エアアジアの支払い手数料についてもエアアジアの手数料を攻略して安く賢く海外旅行で詳しく説明している。
8.遅延・欠航しても補償はない
エアアジアでは、天候や機材故障による大幅な遅延、欠航の場合、代替機への振替、チケット代金の払い戻しはしてくれるが、その他の補償は基本的にない。
海外旅行保険に入る予定の人は、航空機遅延費用をオプションで付けておくといいだろう。6時間以上の出発遅延や欠航、乗継に間に合わず6時間以内に代わりのフライトを利用できないなどの場合に、宿泊費、食事代、通信費などの保険料が支払われる。
エアアジアの都合によるキャンセル
エアアジアを利用する上で最も注意すべきなのは「エアアジアの都合によるキャンセル」だ。エアアジアへのクレームでは、この件に関するものが一番多く、エアアジアの評判の悪さはここに原因がある。
予定されていたフライトの中から、エアアジアの判断というか都合で、フライトがキャンセル(欠航)になってしまうことがある。
何便もある中からたまに1、2便キャンセルが出る、という程度のものではなく、大量のキャンセルが同時に行われたこともあった。
例えば週3便、月水金にフライトが設定されている路線があるとする。だが、突然9月の水曜の便はすべてキャンセル、というような事態が起こる。
あるいは、10月から路線を再開すると宣伝し、セールまで行っているのに、突然、路線再開が翌年3月からになることもあった。
こうした便を予約していた人は大迷惑だ。早ければ1カ月以上前にキャンセルの連絡がくるが、1週間を切ってから連絡が来た人もいる。
そうなると、他社の便が見つからず、あるいは見つかったとしても値段が上がっていて購入できず、旅行の中止を余儀なくされる人も出てくる。
なぜこのようなことが起こるかというと、予約数が予想以上に少なく、採算が取れないとエアアジアが判断した場合が多い。
例えば2022年、タイの入国制限は早めに緩和されたが、日本側の制限が撤廃されたのは10月11日だった。それまでは外国人観光客は1日5万人しか入って来られなかったし、個人旅行も不可だった。
エアアジアとしては、もっと早く日本の入国制限が緩和されると考え、セールまでしてチケットを販売したのだが、日本人はタイに旅行に出ても、タイ人の予約は予想を遥かに下回った、とも考えられる(キャンセルの理由について詳しくは発表されていないので、あくまでも憶測だが)。
各国の入国制限が完全に緩和された今、こうした大量キャンセルは起こらないとは思うが、新しくできた路線や増便は注意が必要だ。
例えば月水金に運航する新しい路線を作ってはみたが、実際には集客できず、月金だけ飛ばすことにして、水曜はすべてキャンセルにする、ということが今後も起こる可能性はある。
毎日1便飛んでいる人気路線があり、ハイシーズンだけ1日2便飛ばすことにしたが、思ったより予約が少なく採算が取れなさそうなのでキャンセルする、というようなことも起こり得る。
キャンセルとなった便を予約していた場合には、3つの選択肢がある。
①フライトを変更する
同一ルートの別の日付のフライトを予約し直す(無料)。
②クレジットを受け取る
支払った金額と同じ額をエアアジアのクレジットアカウントに返金してもらう。トラベルバウチャーという呼び方をされることもある。ただしこれは、エアアジアを予約する時にしか使えない。2年間有効で、ルートの変更も可能だ。
③返金を依頼する
支払った金額をクレジットカードなどへ戻してもらう。
返金が依頼できることにはなっているが、返金してもらうのはとてつもなく大変な作業だと言う。私自身は、今までキャンセルにあったことがないのだが、エアアジアとのやり取りで疲弊した経験は何度かある。
チャットボット「 Ask Bo」とのやり取りがわかりづらい上、サポートにメールを出してもなかなか返事がこない、という感じで数カ月が過ぎてしまうようだ。
確かにエアアジアのチャットボットは、いつ使っても満足な答えを得られたためしがない。
一番簡単そうな①のフライトの変更を選んだ場合でも、変更しようとしたら、自分のフライトがなぜかキャンセル扱いになっておらず、なかなか変更できなかったという人もいる。
なんだかエアアジアのデメリットばかり並べ立ててしまったが、ネット上の評判に惑わされず、エアアジアとは、LCCとはどんなものなのかを理解してほしい、という理由からだ。
注意事項の見落としや勘違いで、今まで何回か、エアアジアには悔しい思いをさせられている。「だまされた!」と叫んでしまったこともある。でも、これからも私はエアアジアを使い続けるだろう。なぜなら、やはり安さは魅力だから。
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